日本予防医学会

日本予防医学会について

理事長挨拶

理事長挨拶

まずは令和6年能登半島地震で被災された方々に心から深くお見舞い申し上げます。日本予防医学会は、被災地域の復旧・復興のためのご支援を、疾患の予防医学と公衆衛生の見地からご支援して参ります。
さて「21世紀は予防医学の時代である」とされております。悪性新生物や、心疾患、脳血管疾患や、糖尿病、慢性腎疾患や消化器疾患などの生活習慣病や、精神疾患などの慢性疾患あるいは感染症などを予防することは人々のQOLの向上に大きく貢献することは言うまでもなく、人生の大きな目的でもあります。しかしながら、それらの有病率あるいは健康寿命の点でも、これまで予防の目的が十分、達せられているとは言えません。それは、これまでの予防法が十分、正しくなかったり、あるいは予防法を徹底させることができなかったりしてきたことなどが考えられます。
本学会では、人々の健康と福祉を向上するために、従来からの基礎的・臨床的予防医学研究を融合させた新しい学問体系のもと、広く予防医学を展開します。そのため人々の健康や福祉に直結する生活習慣や環境因子の疾病への影響に関する公衆衛生学的な調査研究を含む疫学から、予防方法を検証する実験疫学あるいは実験研究を行い、疾患の予防の方法に対して正しいEvidenceを提供します、同時に地域保健の向上に資する啓発活動を行います。この活動の一環として、「予防医学指導士認定制度」および「予防医学認定医制度」を設けております。
栄養や食生活あるいは運動は生活習慣病に対する最も有効な予防法であることは言うまでもありません。しかしながら食品や栄養素が生活習慣病に有効であるとする研究結果には、賛否両論となるものが極めて多く、確実な客観的な根拠に基づく予防方法は十分ではありません。このため、より予防につながる実践的な方法を案出するために、疾病予防薬などの治療方法を加味したより臨床的な予防法も十分、駆使することも必要です。また一方では保健機能食品、代替医療(鍼灸や漢方等)などの疾病予防効果を科学的に追求し、従来にないアプローチとして、より多次元的な予防医学の展開を目指します。
働く人の健康問題は、近年の精神疾患の増加を抜きには語れません。この問題を一刻も早く解決するために、より実践的な方法として「予防医学メンタルヘルス相談士」の制度も活用していきます。
最後に本学会のOfficial Journalとして、昨年、Preventive Medicine Research (PMR)という英文誌を発刊しました。予防医学が日本から世界へ発信できる場として是非ともこの英文誌を活用するとともに、日本予防医学会に対する皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

令和6年2月1日

一般社団法人日本予防医学会 理事長
 中村裕之
(金沢大学医薬保健研究域医学系衛生学・公衆衛生学教授)